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大曲智子広報室

ライター大曲智子のお仕事のお知らせとフリートーク。お仕事のご相談やご連絡は→detroit_8000@hotmail.com

2014年「私、これ好き!」映画10本

新年あけましておめでとうございます。

2014年は、新書『ガルパンの秘密』や、『ピンポン THE ANIMATION COMPLETE BOX』といったお仕事もさせていただき、アニメのお仕事を少しずついただけるようになった年でした。

個人的には試写でも映画館でも、映画を意識的に多く見るようになったなと。私は映画ライターではないのですが、映画以外のお仕事をするときは「映画の仕事を中心にやってます」なんて調子のいいことを言っているので、せめてできる限りの本数は見ておこうと……。

というわけで2014年に公開された新作映画の中から「私、これ好き!」と思った映画を10本選んでみました。これはあくまでも個人的な趣味ですよーーー。暗い映画好きなもんで。

 

LIFE!

ベン・スティラー監督・主演による、大人の人生大冒険スペクタクル。歴史ある写真誌LIFEの写真部で真面目に勤めてきた主人公が、LIFEの最終号の表紙を飾る写真を求めて世界中を駆け回ります。フィルムで撮影されたどこまでも広がる地球の美しい姿に感動したのはもちろんですが、主人公が探し回る有名写真家(ショーン・ペン)の生き様がたまらない! 携帯も持たず、行きたいところ、撮りたいものがあれば地球上のどこにでも行ってしまう。「これが俺の人生だ」と言わんばかりの表情に、ほかの動物にはない人間ならではの素晴らしさを感じました。

 

LEGO(R)ムービー』

子供の頃ではなく、プチサブカル女子だった大学生ぐらいの頃によくレゴのキットを買っていました(恥)。しかしレゴに年齢制限はありません。たとえ10代後半でも夢と希望を抱きながらレゴを組み立てていた私にとって、レゴの世界に入ることができるこの映画は興奮しっぱなし。文字通り手に汗握りながら、前のめりになりながら見ていました。最後の最後におまけ的な映像があるのは昨今では常識ですが、この作品のラストはほかとは違う、すごい発想で作られています。このラストを見ないと完成しない映画。スタッフの愛に感動しました。

 

たまこラブストーリー

テレビシリーズ「たまこマーケット」の続きとなる、完全新作の劇場版アニメーション。「たまこマーケット」ではヒロインたまこの、家族&友達&商店街&おもちへの想いが綴られていましたが、その中でたまこの幼なじみという立場でしかなかった男の子=もち蔵がこの映画のある意味主役。恋愛に鈍感なたまこのことを実はずっと好きだったもち蔵が、高校卒業を前にたまこに思い切って告白することから物語は始まります。告白することは決してネタバレじゃありません。たまこにとっては大切な幼なじみで、ずっとこのままの関係でいられると思っていたもち蔵が、自分に恋心を抱いていた。たまこのいったりきたりの心の揺れが丁寧に丁寧に描かれているのです。これこそ青春と言わずしてなんでしょう。「たまこマーケット」を見ていなくても楽しめるとは思いますが、気になる方は軽い予習がオススメ。

 

アクト・オブ・キリング

60年代にインドネシアで行われていた100万人規模の大量虐殺。加害者だった人物たちは現在も地域の英雄的存在として堂々と生きている。この作品の監督たちは虐殺を行った彼らに「当時のことをカメラの前で再現してみませんか」と提案。自分たちが行った非道な行為をもう一度体現する様子を収めたドキュメンタリーです。人を殺したときのことを誇らしげに語る男、虐殺をアーティスティックに表現しようと映画制作に一所懸命になる男など、常識を超えた行動が次々と登場。「自分の犯した罪を顧みて反省するのでは」というこちらの期待と予想を裏切りながら、しかし彼らの表情は純朴にも見えて……。人間とは何なのか、悪はどこから生まれるのか。この映画を見てから何日間も憑りつかれるほどに考え続けました。答えは出ていません。

 

『チョコレートドーナツ』

育児放棄されたダウン症の子供にゲイのカップルが出会い、家族として一緒に暮らしていく。愛し合い、尊重し合い、平和に暮らしている3人なのに、社会がそれを引き裂こうとするという、70年代に実際にアメリカであった実話をもとにしたという物語です。私は、立場や人種の違いはあっても人は等しく平等だと考えているので、幼稚で浅はかな考え方によって理不尽に虐げられる人たちがかわいそうでならないし、あるべきではないと思ってます。胸が痛くなるほど悲しい物語だけれど、こういう考え方を持つ社会や人々に問題提起をする作品。しかし明るさもこの作品の魅力。天使のような笑顔を見せるダウン症のポールの存在に、なにより私が心を打たれてしまったのでありました。

 

『罪の手ざわり』

上手に練られた市井の人々の群像劇が好きなのですが、こちらは中国で実際に起きたいくつかの悲惨な事件をもとにした、「罪とは何か」を問う完璧な群像劇。中国の片隅で、ただ毎日をひたすらに生きていたごく普通の人たちが、時には悪意の自覚もないままに起こした、あるいは起こしてしまった悲しい事件が、流れるように描かれていきます。最初の事件の関係者が、次の事件にまた関わり、そしてまた次……というように、事件と事件は見えない線で結ばれている。ニュースで日々流れる、ほんの些細なきっかけで起こる事件の報道に「もしかしたら自分だったかも」と思う感覚に似ているような気がしました。

 

『みんなのアムステルダム国立美術館へ』

レンブラントの「夜警」など世界的美術作品を数多く抱えるオランダのアムステルダム国立美術館が改修工事のために10年も閉鎖していたことは有名ですが、なぜ10年もかかってしまったのか。ただ記録のつもりでカメラを回していたところ、とんでもない人間ドラマが録れていたという、はっきり言って笑えるドキュメンタリーです。市民第一&自転車王国のオランダらしく、敷地内を自転車が通れるデザインじゃないと工事が進まない。その間に館長はおそらく嫌になっちゃって退任。度重なる会議に疲れて美術館スタッフが居眠りしてたりと、誰もが「もーイヤ!」という態度なのが露骨に出ていて、まるでコント。それでもとあるスタッフの「この美術館は自分の子供のようなものだ」という責任と自信に満ちた言葉や、日本からやってきた仏像を愛でまくりの学芸員など、ホッとする場面も多々。すべてを見せられた上で、アムステルダム国立美術館に行ってみたくなる。面白いなあ。でもだからって10年は長すぎ!

 

『トム・アット・ザ・ファーム』

ここに書き殴ったので割愛しますが、「同じ時代に生きている幸せ」を感じさせてくれるグザヴィエ・ドランは至高ということです。先日インスタグラムにグザヴィエがファッションフォトをアップしていたのでなにげなくコメントを書いたところ、なんと本人からリプライをもらってしまうというサプライズが起こりました。自慢です。

 

メビウス

現在も公開中の話題作。キム・ギドク監督の前作『嘆きのピエタ』を見てからこれを見るのも乙なのでは。夫の浮気癖に激昂した妻が夫の局部を切断しようとして失敗。怒りが収まらず、高校生の息子の局部を切断してしまうことから始まる、悲劇の連鎖=メビウス……。こうストーリーを聞くだけで人によってはドン引きしたり、はなから受け付けないでしょうが、この映画がすごいのはこれだけじゃなくて「セリフがない」ことなのですね。舞台は韓国だけど、地球上の誰もがこの物語を恐怖として受け止められる。キム・ギドクってばなんてドS……ぶるぶる。狂った母親を演じているのは韓国女優のイ・ウヌですが、父親の浮気相手の女性もなんとイ・ウヌ。同一人物には見えないほど上手に演じ分けていますが、ここに何か意味があるのかも? それにしても女→男、男→女、女→男……と続くメビウスはもはや怪談にしか思えませんよ。

 

『マップ・トゥ・ザ・スターズ』

ホラー映画の巨匠デヴィッド・クローネンバーグが、ハリウッドに生きる人々をシニカルに、そして慈愛をこめて描いた人間ドラマ(だと思います)。ジュリアン・ムーア演じる薹のたった落ち目女優ハバナがすごい! 大物監督の次回作の主演を射止めたくて仕方ないハバナ。雇ったばかりの個人秘書アガサの前でトイレの大をしちゃうハバナ。仕方ないよねハリウッドスターだって人間だもの……。私が気に入ったのはそういった「ハリウッドにうごめく地位と金に飢えた人々」を、時おり現れる幽霊と隠喩めいた詩で包んでいるところ。そのためただのハリウッド裏側あるあるネタに終わることなく、むしろファンタジック。セリフも意味ありげに聞こえてきちゃうのです。もちろん欲だらけの狂った人々を笑い飛ばす映画には違いないので、何度見ても楽しめそう。実在のハリウッドセレブの名前がバンバン出てくるのも、映画好きにはたまらないです。